マクロン大統領の演説に隠されたもの 「私たちは戦争の最中にいる」

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フランス語の記事http://www.lefigaro.fr/politique/guerre-ennemi-premiere-ligne-le-vocabulaire-d-emmanuel-macron-est-il-pertinent-face-au-coronavirus-20200326

 

本日は、フランス語の勉強もかねて『Le Figaro』の記事を日本語に訳してみた。

フランス語で読む分にはあらかた理解できるが、日本語に訳すとなると不自然な文になってしまい難しい。

 

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3月26日のニュース

「戦争」、「敵」、「第一戦線」

エマニュエル・マクロンの用いた語はコロナウイルスに対して適切か?

健康危機が始まって以来、大統領は好戦的な語彙を選り好んでいる。このレトリックを言語学者や危機コミュニケーションの専門家が分析した。

「私たちは戦争の最中にいる」「敵はここにいるが、目に見えず、捕らえることができない」「この戦争において第一戦線にいるのは医療従事者らである」「すべての国がこの戦いに参加している。」

フランス全土で健康危機が始まってから、マクロン大統領は好戦的な語彙を使用している。これらの重圧的な語は果たして適切であろうか?言語的役割として、これらの専門用語の裏には何が隠されているのであろうか?言語学者と辞書編集者の見解によると、「私たちが集団に対して何か重要な事を話しかける時、私たちの反射作用は本能的に拡張メタファーに反応する。『Les secrets du mots』の作者によると、「私たちはそのようにして、聴衆にメッセージを投げかけるのだ。実のところ、私たちはテクニカルな語を避ける。エピデミックを想起させるような範疇の語はとても少ない。」「私たちは一般的に航空や、狩猟、植生または季節、人体、スポーツ、宗教、そして最終的に戦争の分野においてメタファーを得る事ができる。」

しかしながら、「すべての医学用語は戦争の考えに関連付いている。私たちはこの事を忘れているが、『confinement 監禁』という語は軍事用語である。この語は国境や拘置を想起させる」。そもそも「我々は戦争対癌については話さないではないか。また、病気を征服しようとはしないであろう。病気は退職者を攻撃しないではないか。エピデミックは『前進』『後退』する、即ちは『人殺し』なのだ。」また、辞書編集者の結論によると、「このようなメタファーによってフランス人は危機の重大さに気づく事ができるのだ。」

 

「この攻撃的な言葉は、大統領の権力を取り戻す試みである」

 

危機コミュニケーションの専門家は「この好戦的な言葉は適切ではなく、特に、社会的文化や社会学とは相反するものである。演説を聞いた多くのフランス人は戦争を知らない。私たちがド・ゴール大統領やミッテラン大統領なら出来たかもしれない衝撃的戦略と同様な精神を体現することは望めない。」と議論する。

この専門家によると、この好戦的な言語は「明らかな政治的戦略」を暗示している。「マクロン大統領の演説はジョルジュ・バランディエ(フランスの社会学者、人類学者、民俗学者)の『無言の権力は存在しない』という引用を私に思い起こさせた。私たちはこの攻撃的な語には、共和国大統領反対派の圧力や、権力の反応は遅すぎたと判断した世論に対しての権威回復を試みたものであることに気がつく。好戦的な言葉は、危機を前にした行動プランの可読性の欠如を隠蔽するには十分ではない。」

しながら、Jean Pによると「危機」という語は、『健康』と関連付いているとしても瞬時には理解できない。「私たちは正確にテーマを掴む事ができない。それは抽象的だ。」それならば、「伝染病」について話すべきだろうか?辞書編集者はこの事について曖昧に判断する。「『伝染病』はとてもモラルな意味を含意している。それに対し『戦争』と『敵』はとても理解しやすい。同様に、第二次世界大戦以来、『戦争』という語の裏には自由という意味を見出す事ができる。」Florian Silnickiは、現在の傾向を引き起こしているのは「気候ストレス」によるものだと独自に展開する。「この戦力コミュニケーションは、人類を取り巻く世界連帯を結集し、創造するためのイシューを誇張している。第一戦線にいる人、すなわち戦争の統率者は、政治のチェス盤の上で絶対的な人物なのだ。」

 

「エピデミックは言葉の意味合いを変化させている」

 

「第一戦線。」共和国大統領は医療従事者を称えるためにこの形式を用いた。しかし同様に、「医療従事者が治療する事を認めた女性と男性、そして生存し続けている国々」によって構成された『第二戦線』。これらの女性・男性は移動し、居住し、改善している(…)。そして、彼彼女らは農民であり、食品分野や第一必須商業に従事している人々である。(…)」とマクロン大統領は3月25日、ミュルーズにて宣言した。「エピデミックは言葉の意味合いを変化させている。第一次世界大戦の間『第一戦線』はとくに第一塹壕を示していた」、とJean P は指摘する。「第一塹壕での爆撃においては、単に第二塹壕がその背後にあり、戦闘準備状態にあった。大統領の口元に、これらの形式の意味合いの変化がよく見てとれる。第一戦線という語には、病院にて戦う人々が暗示されている。この人々が前線にいるのだ。」では「第二戦線」は存在するのであろうか?「第二戦線は代替の為にいる訳ではなく、物資の全般的な管理や必要不可欠な製品に携わっている人々を表している。つまりは、食産や物流に従事している者である。第二戦線は私たちが生き残る上で重要な戦線となった。危機のたびに新たな意味合いの変化が創造された。